9月のポルドイ峠で“まさかのぷち雪山体験” ピッツ・ボエ (Piz Boè, 3152m) 登頂を目指したけど… 初心者が体験したドロミテ・ポルドイ峠の劇的な一日

なんと一晩で、ドロミテの女王・マルモラーダ山系 (Marmolada) や、サッス・ポルドイ展望台 (Sass Pordoi) の眼下に広がる稜線一帯が、すっぽりと雪に覆われました。わずか3日前にコルバラ (Corvara) から見た景色とはまるで別世界。これぞまさに「白銀のドロミテ」…!そのあまりの美しさに、しばし言葉を失いました。

昨日歩こうか迷った、観光案内所でオススメされた「Viel del Pan Trail」という尾根道 (Terio de le Creste, 601) も雪でスッポリと覆われています。これだけ雪が積もれば登山は躊躇なくあきらめられます 😆

雨のち雪。ドロミテの9月は、まさに“山の天気” 

朝、カーテンを開けた瞬間、思わず息をのみました。昨夜から降り続いていた雨は、夜のうちに雪へと変わっていたようです。しかもその積雪量は想像以上で、標高 2500m 以上はすでに完全な雪景色。「9月のドロミテ、侮れない……」と思わずつぶやいてしまいました。 


アラッバ (Arabba) のリフトが “明日で今季営業終了” という情報にも、ようやく納得。ホテルで朝食をとりながら、今日の予定をどうするか、しばし思案しました。

予定していたルートは、雪のため断念 

当初の目的は、ヴィア・フェラータ「Via delle Trincee / La Mesola(VF4B)」。中・上級者向けの鉄道跡をたどる人気のルートですが、積雪と装備不足のため、今回は断念。観光案内所で勧められた稜線ハイキング「Viel del Pan Trail」も雪に覆われ、リスクが高すぎます。


思いつきの一手、行き先はPiz Boè(3152m) 

行き先を西の Canazei や Ortisei に変更しようかとも考えましたが、ふと頭に浮かんだのは、数日前から気になっていたあの山、Piz Boè (3152m) 。 ヴィア・フェラータでの登頂を考えていましたが、この雪では無理。ただし、一般登山道からなら比較的登りやすいとガイドブックにあったのを思い出し、「行けるところまで行ってみよう」と、挑戦することにしました。

いざ雪山へ。リフトを使って標高2950mへ一気に上昇 

Passo Pordoi (2239m) からロープウェイで* Rifugio Maria (2950m) へ。到着すると、そこは完全な雪山でした ⛄️❄️ 空気はキリリと冷たく、辺り一面が銀世界に染まっていました。 


「これはさすがに無理かな…」と一瞬ためらいましたが、近くで雪と戯れている人たちの姿を見て、少しだけ歩いてみることに。

“まさかの任務”と、撤退の決断 

新雪は想像以上に歩きにくく、30cmほど足がズボズボ沈みます。途中、雪だるまを作ってはしゃぐドイツ人グループに写真を撮ってもらったり、家族連れの後ろについて歩いたりしながら、徐々に高度を上げていきました。 


ところが途中で、その家族の両親が口論を始め、お母さんと息子さんは引き返すことに。彼らは明らかに装備が不十分で、天候を考えれば当然の判断だと思いました。 

そんな厳しい状況でも私は Rifugio Forcella Pordoi (2829m) までたどり着きました。しかし、見上げた先の Piz Boè の山頂では、吹雪が巻き上がっているのがはっきりと見える…。「これは危ない」そう判断し、登頂は断念。 

そのとき、先ほどの親子連れのお父さんに呼び止められました。「奥さんに“これから山頂まで登って、3時間後に戻る”と伝えてほしい」と、なんと伝言を頼まれる展開に。思いがけず“雪山メッセンジャー”を任されることになりました😅

Rifugio Forcella Pordoi (2829m) から Passo Pordoi (2239m) までのは、人気の登山道 (627) もありますが、流石にトレースはありませんでした。Piz Boè (3152m) の山頂に別れを告げて、もと来た道を戻りました。

無事任務完了。そして、心に残る雪山体験に

ロープウェイ乗り場サッス・ポルドイ展望台まで戻り、お母さんに無事に伝言を届けてミッション完了。彼女はとても心配していた様子でしたが、少し安心した表情にホッとしました。 


「もっと登れたかもしれない」そんな思いもありつつも、無理をしない判断ができたことに、今では満足しています。少しだけでも、予期せぬ雪山の世界を味わえたことは、貴重な経験でした。

晴れ間に現れた “本気のアルプス” の絶景 

昼を過ぎ、サッス・ポルドイ展望台でくつろいでいると、ふと空が晴れ、目の前には、雪化粧をまとったアルプスの峰々。 


「……これは、言葉にならない」これまでの景色とはまるで違う景色が広がっていました。“雪山に登りたくなる気持ち”、ほんの少し分かった気がしました。 


昨日とは別世界。標高2500m以上はしっかりと雪が積もり、まさに「一晩で季節が変わる」――それがドロミテのリアルです。

今日の締めくくりは、ビールと生ハム 

アラッバ (Arabba) のミニスーパーで生ハムとビールを買い込み、ホテルで一息。明日以降のプランをじっくり練る時間も、旅の醍醐味のひとつですね🍺🥓


✍🏻 編集後記:ドロミテ初心者の方へ 

今回のように、9月でも雪が降ることがあるドロミテ。「夏の山」として訪れるつもりでも、天気によっては一気に冬山になります。標高が高い所での登山やヴィア・フェラータに挑戦するなら、事前の情報収集と臨機応変な判断がカギです。 でもそのぶん、予想を超える絶景と出会える場所。そんな「ドロミテの奥深さ」を、初めての方にも伝えられたら嬉しいです。

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