ヴィア・フェラータ「Piz da Lech (VF3B)」を登り切ると、目の前に現れたのはセッラ (Sella) 山群の最高峰「Piz Boé (3152m)」でした。その特異な形に、なんとなく気持ちが高まり、「よし、あれも登ってみよう」と心に決めたのでした。
話を今朝に戻しましょう。今朝は昨日のちょっと苦い思い出をリセットするかのように、澄んだ冷たい空気が山々を静かに包み込んでいました。コルバラ (Corvara) の村は雲海の下に隠れ、その姿を見ることはできませんでしたが、遠くにそびえる Tofana di Rozes (3225m) は、朝焼けの紅に染まった空を背に、黒く浮かび上がるシルエットとなっていて、その神々しい姿にしばし見入ってしまいました。「本当に今日、雨なんて降るのかな?」と疑ってしまうほどの、静かで穏やかな朝でした。
Tofana di Rozes (3225m) の左側は Tofana di Mezzo (3244m)
同室だったアメリカから来た男性はとても親切で、“なぜ昨夜は晩ご飯を食べなかったの ?”から会話が始まり、Rifugio Kostner の (手洗い) 水は飲めないけれど、外の水は雪解け水で、(自己責任ですが) 飲める事を教えてくれました。“心配なら” と言うことで、簡易的な水を浄化する薬もいただきました。 さらにおすすめのハイキングルートまで、細やかに教えてくれました。なんと、食べきれなかった朝ごはんのおすそ分けまでいただき、朝から心が温まるひとときでした。
そして出発前、食堂で朝食をとっていた別のアメリカ人グループ (女性4人) に声をかけられ、「ここのご飯は本当に美味しいから食べていきなよ!」と勧められ、なんとその場でお裾分けまで。ありがたくご厚意をいただきながら雑談に花を咲かせていると、昨日はあまり良い印象を持っていなかった山小屋に、思わぬ転機が訪れます。
この朝、初めて顔を合わせたRifugio Kostnerの女将さんが、にこやかに会話に加わってきたのです。「日本人なの?去年、北海道にスキー旅行したのよ!」と、壁に飾られた写真を指さしながら話してくれる彼女の明るく気さくな様子に、昨日受付で対応してくれた若いスタッフに対する “ムッとする感じ” もすっと和らぎました。
「わざわざ北海道まで行かなくても、ドロミテで十分じゃない?」と軽口を返しつつ、あたたかなやり取りに心が解けていくのを感じました。昨日感じた小さなわだかまりも、この朝のひとときで、すっかり溶けてしまいました。山小屋に対する印象も大きく変わり、晴れやかな気持ちで出発の準備を整えました。
さあ、そんな穏やかで清々しい気持ちのまま、Piz da Lech (VF3B)に向けて出発です。ただ、天候は次第に崩れ始め、どんよりとした曇り空の下、不安を抱きつつのスタートとなりました。
ルートの序盤は直登気味の岩壁が続きましたが、しっかり整備された道のおかげで、気持ちは前向き。時折晴れ間がのぞくと、雲の切れ間から遠くの山々が顔を出し、ほんの一瞬ですが絶景を楽しむこともできました。
そしてついに、ヴィア・フェラータ Piz da Lech (VF3B) を登り切ると、目の前には堂々たるピッツ・ボエ (Piz Boé, 3152m) が見えました。ここから山頂までの景色は素晴らしかったです。
山頂は雲が多めでしたが、ここまでの達成感も相まって、今朝同室のアメリカ人に頂いたサンドイッチを片手にしばしその景色を堪能しました。
今回は雲が多くMarmolada 山系はほとんど見えませんでしたが、晴れていれば絶景なのではないでしょうか?“でも一向に朝食を一緒に食べたアメリカ人グループが登ってこないなぁ 🤔”
下山を始めると、再びガスが立ちこめ、ひとりで歩く山道に少し心細さを感じる場面も。それでも無事に下山ルートのワイヤーを見つけたときにはホッとひと安心。
山頂方面を振り返ると、上部はすっかりガスの中に隠れていました。
快調に歩き、11時前には Rifugio Kostner に戻ってくることができました。その速さに、山小屋のスタッフも驚いた様子でした。
まだ午前中ということもあり流石にビールを飲む気にもならず、カフェ・オ・レ (Café au lait) を頼もうとしたら通じず、ここはやっぱり「カフェラテ (Caffe Latte)」なんですね 😅
朝食のときに話したグループの中で、ヴィア・フェラータには行かなかった女性と再会。カフェを飲みながら、ドロミテ旅行の話に花を咲かせ、彼女たちは今晩コルバラ (Corvara) に泊まり、明日ヴェネツィアに移動、そしてアメリカに戻るとのことでした。
さて、私はコルバラ (Corvara) で宿泊するか、次なる目的地アラッバ (Arabba, 1605m) へ向かうか決めかねていたので、観光案内所で情報を得るために、ロープウェイを乗り継いで転げ落ちるように下山。11時50分、なんとかコルバラ Tourist Officeに滑り込むことが、ハイキングマップとホテルの情報を得ることができました。
私はその後は紹介された宿を 5 件ほど回ってみたものの、情報と違っていたり、どこもほぼ同じような価格 (1泊朝食付きで40ユーロ) だったので、ミッション完了とばかりにアラッバへバスで移動することにしました。
アラッバでは、ロープウェイの終点にあるRifugio Luigi Gorza に宿泊する予定でした。アラッバこじんまりとした村で、ロープウェイ乗り場もすぐに発見。ですが、ここでまた新たな展開が。ロープウェイの切符売り場で、宿泊を予定していた Rifugio Luigi Gorza のことをたずねてみると、なんと夏は営業していないとのこと知りました……
ロープウェイには乗らず、再び村へと戻ります。これと言ってアイデアもなかったので観光案内所に行くも昼休みでした。ちょうど雨も降り出し、観光案内所が再び開くのを待ちながら、のんびりと村を散策。
すると、コルバラから同じバスに乗っていたドイツ人の女性と再会。なんと彼女も、歩いてドイツからヴェネツィアまで旅しているのだとか!先日、Rifugio Auronzoで出会った別のハイカーも同じことを言っていたなぁ……ドロミテには、そういう旅人が本当に多いのかもしれません。
最終的に宿泊は、Tourist Office さんとロープウェイの受付の人が勧めてくれた ⭐️⭐️ Hotel Pordoi(1泊42€ + HB16€)に決定。食事は特別美味しいというわけではなかったものの、十分満足のいく滞在でした。 そして気づけば、このホテルに3泊することになるとは……
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